過信居士の
三国漫画レビュー集
※過信居士さん(当館常連様)執筆のコンテンツです。

 世の中には、我々の想像を絶する、すごい漫画が存在する。
しかし、常軌を逸脱した発想が漫画を面白くするのも事実である。
過信居士という漢がいる。
彼は数々の「とんでもない」三国漫画を読みこなしてきた。
彼曰く、それは茨(いばら)の道であった。と…
彼ならではの独特の漫画観で書かれたレビューを、ここで一挙公開しよう。

@三国志群雄伝 火鳳燎原

作画・陳 某

 司馬懿仲達が主人公の漫画。エン州の富豪の子息として出てくる。
彼には残兵という忠実な組織があり、兵隊達は皆身体障害者である。
そして貂蝉にあたる人物もこの残兵に属する男である。
その他にも劉備が大和時代の人の様な格好をしていたり、張飛が入れ墨をしている。関羽の鬚も短い。
 そんな彼らは略奪をする事によって、関東軍の略奪を未然に防ぐといってるが、よく考えると本末転倒。物資を手に入れられない関東軍は、他で略奪を働かざるを得まい。
 董卓軍の最初の軍師が許臨という男で、呂布の親友。そしてその許臨が殺されると、呂布が軍師になる。
 というとんでも漫画だが、トーンを多用した作画はきれいで読みやすく、線が艶めかしい。貂蝉の腰のくびれは、男という設定なのに非情に女らしい描写である。絵で三国志を楽しむ人にはいいかも。

A覇-LORD

作・武論尊 画・池上遼一

 まず最初に、卑弥呼が女王になるところから始まります。
主人公はその卑弥呼の将軍で、全国統一したから、漢に渡って男を上げたいって言ってますが、あんた既に男上げてるやん!みたいな突っ込み
は野暮ってもんです。ええ、卑弥呼と出来ちゃってます。
 それはいいんですが、この話は黄巾の乱からなので、魏に使者を遣わす五〇年以上も前に倭人が漢にいた事になりますね。そこもまあ目をつぶ
りましょう。実際あったかも知れないし。それに、そんな事左慈、もとい些事です。なぜなら、この倭人が劉備になるんですから!劉備を殺して成り代わるんですから!この驚愕の一事を前にしたら、どんな事だって目をつぶるでしょう。何それ?ギャグにしかなりませんよ。まず倭人て、言葉どうすんだよ。まあ当時は北と南じゃ言葉が通じなかったから筆談で話をしたとか言いますし、言葉はいいでしょう。じゃあ剣技や、馬術は? 文化的作法は?
 これに答える学術的回答はただ一つです。日本はトルコ系移民に支配されていた、というやつですね。トルコ系移民なら騎馬にも優れ、剣技も……。しかし、中華や蒙古、朝鮮をスルーして日本に来ますかね?それに学問は?文字が書けなきゃ筆談以前の問題でしょう。うーむ謎が深まる…。
 でも、これですらまだ序の口だったりします。ええ。ですのでちょっと驚愕の事実を過信居士ランキングにしてみました。

10 張飛が熱血で女に優しい
9  公孫「王賛」が肥満で卑屈
8  日本を統一した男が漢で一旗揚げようとする。
7  関羽が禿げで髭短かっ!
6  張角が劉備と仲良し
5  劉備が倭人
4  諸葛亮が三才で論語を解す
3  超雲が女
2  しかも呂布との間に子を産む
1  その子が関羽の養子に。名は関平


 関平?!関平ですか?!って思いっきり凄い事になっています。僕はあまりに突飛な展開だからもう読むのを止めようと思ってたんですが、これを見た時に、もう最後まで付き合おうと決めました。なんだよそれ〜。面白すぎるよ〜。呂布と趙雲の子が関平…どうするの?彼の活躍は麦城だよ?折角そんな大それたキャラクター作ったんだからもっと活躍させればいいのに、一回こっきりで死んでしまうなんて…可哀相…でもきっと使いまわすんだろうな…何はともあれ、今後に期待です。(五巻現在)

B蒼天航路

原案・李学仁(死去) 作画・王欣太

 蒼天航路は曹操の物語である。詳しくは蒼天三国志さまを覗いて見ると魅力がよく分かると思う。ここではその蒼天航路のとんでもを紹介しよう。
 時折妖術みたいな描写がある。例えば張角が死ぬとき、3匹の龍に飲み込まれて死ぬ。これは曹操・劉備・孫権の抽象である。また烏丸の頭領のトウ頓の顔が烏である。更に諸葛亮孔明に至っては…が、漫画表現だと言ってしまえばそれまでだ。
 貂蝉が出てくる。これは別にとんでもなくはないのでは?とお思いの方もおられようが、蒼天航路は一応史実に準拠している。だから周倉も出てこない。作者は貂蝉みたいな人がいたのではないか、と書いていたが、だとしてもまんま出す必要はない。しかもその貂蝉が初登場の時、不細工。
 曹操四天王の曹仁が禿げ。儒教との根強い対立を描く中で、禿げて冠を被れない人を出すのはどうか。徐晃がすぐ裸になる。以下同文。必殺技を出す。格ゲーじゃないんだから…
 しかし、以上のマイナス要因を差し引いても、蒼天航路という漫画はすばらしい。叙情的で、まさに最後の神話時代というべき三国志を見事に表現している。